日本では、火葬率が99.9%。ほぼ全員が火葬される。だが、世界を見渡せば、鳥に遺体を食べさせる国がある。川に流す国がある。風化を待つ国がある。宇宙に打ち上げる国さえある。
宗教、文化、地理——それらが生み出した、15の驚くべき弔い方。
🦅 1. 鳥葬(チベット、インド)
遺体を鳥に食べさせる
方法:
遺体を裁断し、ハゲワシなどの猛禽類に食べさせる。チベットでは専門の職人が遺体を解体し、骨まで砕いて鳥に与える。
なぜ鳥葬なのか
チベット仏教:
・遺体は魂の抜けた「抜け殻」に過ぎない
・鳥が遺体を天に運ぶ(天葬)
・生前の殺生に報いるため、遺体を鳥に捧げる
環境的理由:
・チベット高地は樹木が育ちにくく、火葬の薪が確保できない
・気温が低く、土中の微生物が少ないため、土葬しても遺体の分解が遅い
ゾロアスター教(インド):
・遺体には悪魔が宿ると信じられている
・火は信仰の象徴なので、遺体を焼くと火が穢される
・土や水も穢すことは許されないため、鳥葬を選ぶ
🌊 2. 水葬(インド・ガンジス川)
遺体・遺骨を川や海に流す
方法:
遺体を川や海に流す、または火葬後の遺骨を川に流す。
なぜ水葬なのか
ヒンドゥー教(インド):
・ガンジス川は聖なる川
・火葬後の遺骨をガンジス川に流すことで、輪廻転生から解脱できると信じられている
・すべてのヒンドゥー教徒がガンジス川に遺骨を流すわけではないが、主流の供養方法
日本(熊野地方):
・江戸時代、「補陀落渡海」という風習があった
・寺院の住職などの遺体を船に乗せて水葬
・熊野地方は密教の聖地であり、「他界との繋がり」を求めた
船員法(日本):
・船舶が公海にあるとき、船内で人が亡くなり、衛生上船内に保存できない場合、水葬が認められている
🌬️ 3. 風葬(沖縄、インドネシア、モンゴル)
遺体を野外に安置し、風化を待つ
方法:
遺体を野外に安置し、自然に風化させる。棺に入れることもある。風化後、遺骨を洗浄(洗骨)し、改めて埋葬する地域もある。
なぜ風葬なのか
沖縄:
・ニライカナイ信仰(祖先の霊が守護神になる場所を信仰)
・遺体には穢れがあると考え、風化後に洗骨(遺骨を海水や泡盛で洗浄)
・明治時代まで風葬が行われ、戦後も1960年代(久高島)、1970年代(宮古島)まで続いた
インドネシア・トラジャ族:
・舟を模した木製の棺桶に遺体を納め、崖に吊るす
・空に近づけるため
モンゴル:
・経文が書かれた白い布で遺体を包み、馬で運ぶ
・わざと落下しやすくして、遺体がずり落ちた場所でそのまま供養
・鳥などによって肉体が自然に還り、遺骨だけが残ると成仏したとされる
🌳 4. 樹木葬(イギリス、北欧、日本)
墓石の代わりに樹木を墓標とする
方法:
遺骨を土に埋め、その上に樹木を植える。または、樹木の根元に遺骨を埋める。
なぜ樹木葬なのか
環境問題への配慮:
・墓石を使わず、自然に還る
・森林保全にも繋がる
イギリス:
・1991年に「Natural Death Centre」設立
・エンバーミング(防腐処理)をしない、土葬、土で分解する棺、墓標を立てない
スウェーデン:
・「ミンネスルンド(追憶の杜)」という匿名性の高い合葬墓
・世界遺産「スコーグスシュルコゴーデン(森の墓地)」
日本:
・火葬後の遺骨を、骨壷または土に還す方法で埋葬
・墓地として認可された場所で行われる
🚀 5. 宇宙葬(アメリカ)
遺骨をロケットで宇宙に打ち上げる
方法:
遺骨の一部を専用カプセルに納め、ロケットに積載して打ち上げる。地球の周回軌道を回った後、大気圏に再突入し、熱によって消滅する。
なぜ宇宙葬なのか
・生前に叶えられなかった宇宙への夢を叶える
・「自然に還る」よりも「宇宙の一部になる」という考え方
バルーン葬:
・大きな風船に遺灰を入れ、成層圏で破裂させる
・宇宙葬の一種、または散骨の一種として数えられる
⚰️ 6. 土葬(世界中)
遺体を土に埋める
方法:
遺体を火葬せず、そのまま土に埋める。
なぜ土葬なのか
キリスト教:
・「最後の審判」で復活するため、遺体をそのまま埋葬
・近年は火葬も増えている(イギリス約73%)
イスラム教:
・棺から出し、真水で体を拭き、白い布「ケフェン」にくるむ
・顔をメッカの方向に向けて埋葬
・火葬は禁止(遺体を焼くことは冒涜)
韓国:
・元々土葬が主流だったが、土地不足により火葬率が上昇(2015年に80%超)
・ロッカー式納骨堂が増加
🔥 7. 火葬(日本、インド、タイ)
遺体を焼く
方法:
専用の火葬炉で遺体を焼却し、遺骨にする。
なぜ火葬なのか
仏教:
・釈迦が火葬されたため、仏教徒は火葬を選ぶ
・魂の浄化
ヒンドゥー教:
・火葬後、遺骨をガンジス川に流す
日本:
・衛生面の理由
・土地不足(遺骨にすることで、限られた墓地スペースに複数の人を埋葬できる)
🏺 8. ミイラ葬(エジプト、南米)
遺体を乾燥させ、ミイラにする
📍 古代エジプト 📍 南米(チンチョーロ文化)
方法:
遺体を自然環境または意図的に作り出した環境で乾燥させ、腐敗を防ぐ。
なぜミイラ葬なのか
古代エジプト:
・来世で復活するため、遺体を保存
・内臓を取り出し、ナトロン(天然塩)で乾燥させる
南米:
・チンチョーロ文化(紀元前5000年頃)では、遺体をミイラにする習慣があった
・世界最古のミイラ
🕌 9. 塔葬(インド・パールシー)
遺体を「沈黙の塔」に安置
📍 インド(ムンバイ、ナヴサーリー)
方法:
遺体を「ダフマ(沈黙の塔)」と呼ばれる円形の塔に安置し、ハゲワシに食べさせる。
なぜ塔葬なのか
ゾロアスター教:
・遺体には悪魔が宿る
・火、土、水を穢さないため、鳥葬を選ぶ
・亡くなった当日に塔に運び、鳥に食べさせる
🎺 10. ジャズ葬(アメリカ・ニューオリンズ)
ジャズを演奏しながら葬列を組む
📍 アメリカ(ニューオリンズ)
方法:
葬儀の際、ジャズバンドが賑やかな音楽を演奏しながら、故人を送り出す。
なぜジャズ葬なのか
・アフリカ諸国の伝統が、ニューオリンズに伝わった
・残された人が強くなるように、賑やかな演奏で故人を安心させる
・「悲しみではなく、祝福」という考え方
🌊 11. 海洋散骨(世界各地)
遺骨を海に撒く
📍 世界各地
方法:
火葬後の遺骨を粉末状にし、海に撒く。
なぜ海洋散骨なのか
・自然に還りたい
・海が好きだった
・墓を持ちたくない
日本:
・1991年、「葬送の自由をすすめる会」が相模灘沖で第1回自然葬を実施
・法務省:「節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪には当たらない」
・厚生省:「墓埋法は散骨を想定しておらず、対象外」
🪨 12. 洞窟葬(フィリピン、インドネシア)
遺体・棺を洞窟や崖に安置
📍 フィリピン(サガダ) 📍 インドネシア(トラジャ族)
方法:
遺体または棺を洞窟の中、または崖に吊るして安置する。
なぜ洞窟葬なのか
・高い場所=天に近い場所
・洞窟=神聖な場所
・土地が狭く、埋葬スペースが限られている
🐢 13. 亀甲墓(沖縄)
亀の甲羅のような形の墓
📍 沖縄
方法:
亀の甲羅を模した大型の墓に、風葬後の遺骨を納める。
なぜ亀甲墓なのか
・風葬の名残
・亀は長寿の象徴
・中国の影響(琉球王国時代)
🌿 14. ミンネスルンド(スウェーデン)
匿名性の高い合葬墓
📍 スウェーデン
方法:
火葬後の遺骨を、匿名性の高い合葬墓「ミンネスルンド(追憶の杜)」に埋葬。埋葬先を遺族に知らせない。
なぜミンネスルンドなのか
・地元から離れることの多いスウェーデンの人々に配慮
・身近にある合葬墓に足を運びやすい
・墓地の管理負担を減らす
🪦 15. ロッカー式納骨堂(韓国)
ロッカールームのような納骨堂
📍 韓国
方法:
火葬後の遺骨を、ロッカー式の納骨堂に納める。扉部分が透明で、中を確認できる構造もある。
なぜロッカー式なのか
・土地不足(元々土葬が主流だったが、山を購入して埋葬するスペースがなくなった)
・管理の難しさ
・都市化による需要増加
世界には、15どころではない、もっと多くの埋葬方法がある。鳥葬、水葬、風葬、樹木葬、宇宙葬——それぞれに、理由がある。宗教、文化、地理——それらが、埋葬方法を決める。
「どう死ぬか」は、「どう生きるか」と同じくらい、大事。
🌍 多様な死生観を知る
世界の埋葬方法を知ることは、その土地の文化を知ること。移住先を選ぶ時、その土地の「死生観」も、考えてみると新しい視点と出会えるかもしれない。
おわりに
いろいろな国を旅するなかで、葬儀の場に遭遇することもあった。
日本では、火葬が当たり前。だが、世界を見渡せば、火葬は少数派。
チベットの鳥葬、インドの水葬、沖縄の風葬——それぞれに、理由がある。宗教、文化、地理——それらが、埋葬方法を決める。
「どう死ぬか」は、「どう生きるか」と同じくらい、文化的な問題のようだ。
移住先を考える時、その土地の「死生観」を知ることも、引越しの一歩かもしれない。
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東西日本の埋葬文化の違い: 関東は骨を全部拾い、関西は一部だけ。なぜ?→ 東西の違い
住居の進化史: 洞窟から超高層ビルまで——2万年の住まいの変遷。→ 住居の進化
参考文献
・「火葬や土葬以外の埋葬方法」心に残る家族葬
・「自然葬の一種『風葬』とは?」お墓きわめびとの会
・「葬制とは?火葬や土葬だけじゃない世界の葬制と方法」イキカタ
・「世界の主な死者の葬り方10種類をまとめました」日常にツベルクリン注射を
・「鳥葬について詳しく解説」Famille
・「自然葬とは?」お墓さがし
・「風葬とは?」はじめてのお葬式ガイド
・自然葬 – Wikipedia

